最新の形状記憶アライナーで「できること」5つ——従来のマウスピース矯正と何が変わったのか
2024年1月、日本でもついに「形状記憶機能つきアライナー」が薬事認可を受け、使えるようになりました。世界では99番目という遅いスタートでしたが、いまでは当院でも全患者様にこの最新アライナーを使用した矯正治療を提供しています。今回は「形状記憶アライナーで何ができるようになったのか」を、患者様にわかりやすく5つにまとめてご説明します。
そもそも「形状記憶」って何?
形状記憶というと難しく聞こえますが、簡単に言うと「決まった形に戻ろうとする性質」のことです。この機能はもともとワイヤー矯正の世界で大きな革命をもたらしました。形状記憶ワイヤーが登場する前は、歯を動かすために複雑な曲げ加工(ワイヤーベンディング)が必要でした。しかし形状記憶ワイヤーは「戻ろうとする力」を利用するため、ほぼまっすぐなシンプルな構造で済むようになり、患者様の負担も歯の移動効果も大きく向上しました。
「では、マウスピースにも形状記憶が使えないか?」——しかし、プラスチック素材に形状記憶機能を持たせることは長らく難しいとされていました。それを2019年に韓国のGRAPHY社が世界で初めて開発・特許取得に成功し、日本でも2024年1月に薬事認可を取得。ついにマウスピース矯正にも形状記憶の時代が到来したのです。
体温(37°C)に触れると決まった形へ戻る性質を利用。口の中に入れた瞬間から、やさしく・持続的に歯をつかみ続けます。
形状記憶アライナーで「できること」5つ
1 ほぼすべての歯の移動に対応できる
「形状記憶アライナーはどんなケースに使えますか?」とよく聞かれますが、現在当院では形状記憶アライナーに対応していない患者様はいません。ほぼすべての歯の移動パターンにおいて、この最新アライナーで矯正治療を行っています。
従来のマウスピース矯正では「このケースはアライナーでは難しい」と判断されることもありましたが、形状記憶素材の高いグリップ力と持続的な矯正力によって、対応できる治療の幅が大きく広がりました。矯正を検討している方は、まずお気軽にご相談ください。
2 アタッチメントがほぼ不要になった
アタッチメントとは、矯正中に歯の表面に一時的につける小さな突起のことです。従来のアライナー矯正では、歯にしっかり力を伝えるためにこのアタッチメントをいくつも装着するのが一般的でした。しかし形状記憶アライナーはグリップ力が高く、アタッチメントをほぼゼロにして治療ができるようになりました。
これは特に、成長期のお子様にとって大きなメリットがあります。アタッチメントをつけるためには「エッチング」という歯の表面処理が必要ですが、まだエナメル質が発達途中のお子様の歯にはなるべく行いたくない処置です。形状記憶アライナーならアタッチメント自体が不要なので、エッチングも必要ありません。
また、虫歯の治療跡(詰め物・被せ物)が多い方にとっても、アタッチメントの装着・除去がなくなることは大きな安心につながります。日常生活においても、歯の表面に突起がない分マウスピースの着脱が楽になり、歯磨きも格段にしやすくなります。
3 型取りからアライナー受け取りまでが圧倒的に早い
従来の外注型アライナー矯正では、型取りのデータを外部の専門会社に送り、何度かやり取りをして、アライナーが届くまでに数週間かかることが一般的でした。その間、歯を動かすことができないのはもちろん、患者様もずっと待ち続けることになります。
形状記憶アライナーを院内で製作する場合、最短で当日——型取りをした数時間後には1枚目のアライナーをお渡しすることができます。「早く治療を始めたい」「できるだけ短期間で完了したい」という方にとって、この即日対応は非常に大きなメリットです。治療が止まる時間が最小化されることで、全体の治療期間の短縮にもつながります。
4 装着時の痛み・違和感がとても少ない
マウスピース矯正を始めるにあたって、「痛くないですか?」というのは患者様から最もよく受ける質問のひとつです。アメリカ・セントルイス大学の研究によると、歯を0.3mm動かすのに必要な力が、従来の熱成形アライナーでは約15Nだったのに対し、形状記憶アライナーではわずか1.5N——約1/9の力で同じ移動が実現できることが報告されています。
力が小さいということは、新しいアライナーをつけたときの「ぎゅっと締め付けられる感覚」が大幅に減るということです。当院でも、従来型のアライナーから形状記憶アライナーに途中で切り替えた患者様から「あれ、押される感じがしない。これ本当に歯動いてますか?」とおっしゃる方が多くいます。それほどやさしい力でも、確実に歯は動いています。
「こんなに楽なら最初からこっちで始めたかった」——当院で従来型から切り替えた患者様の声
弱くやさしい力が持続的にかかり続けることが、歯を効率よく動かす上で最も重要です。強い力を断続的にかけるよりも、やさしい力を途切れなくかけ続ける方が、歯も歯根もダメージが少なく、理想的な移動が実現できます。
5 熱湯消毒(煮沸消毒)ができる
「アライナーを熱湯で消毒したい」——これは従来のアライナー矯正を受けている患者様からよく寄せられていた要望でした。しかし残念ながら、従来の熱成形アライナーは100°C近い高温にさらされると変形してしまい、歯に合わなくなってしまうためNGでした。
形状記憶アライナーは体温(37°C)で決まった形に戻る性質を持っているため、熱湯消毒をしてアライナーが一時的に柔らかくなったとしても、口の中に入れれば体温でもとの形へ戻ります。つまり、しっかりと清潔な状態でアライナーを管理しながら治療を続けることができます。
毎日お口の中に入れる装置だからこそ、衛生面はとても大切です。「ちゃんと消毒できているのか心配」という方にとって、この機能はとても安心感のあるポイントです。
世界では99番目——でも、いまがチャンス
形状記憶アライナーは世界で99番目に日本に導入されました。決して早いスタートではありませんでしたが、裏を返せば、世界で先行した98カ国の実績と知見が積み上がった状態で、日本でもいよいよ本格スタートを切れたということでもあります。
従来のマウスピース矯正(インビザラインなど)を検討されていた方も、これから矯正を始めようとしている方も、ぜひ一度「形状記憶アライナー」という選択肢について担当医に相談してみてください。治療の快適さ・精度・スピードが、これまでとは一段階違う矯正治療を体験できます。
まとめ — 形状記憶アライナーで「できること」5つ
・ほぼすべての歯の移動ケースに対応できる
・アタッチメントがほぼ不要——見た目・歯磨き・着脱すべてが快適に
・型取り当日〜最短数時間でアライナーを受け取れる
・約1/9の力でやさしく歯を動かすため、装着時の痛みが大幅に減少
・熱湯消毒が可能で、衛生的にアライナーを管理できる
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