AIの自動計算に、私の大切な患者さんの歯並びを1mmも任せられない理由
デジタルを駆使し、あえて「徹底的なアナログ」にこだわる私のマウスピース矯正論
皆さん、ごきげんよう。尾島です。
日頃から私のクリニックに通ってくださっている患者さんも、これから歯科矯正を考えてこのブログにたどり着いてくださった方も、いつもお読みいただきありがとうございます。
先日の「セブンミニッツライブ(7分間のライブ配信)」でもお話ししたのですが、最近はありがたいことに、ドクター向けのセミナーだけでなく、一般の患者さんからも「配信見てます!」とお声がけいただくことが増え、とても励みになっています。
さて、今日のブログのテーマは、ライブでも熱く語らせていただいた「マウスピース矯正(アライナー矯正)のステージング(歯の動かし方の計画)は、本当にAIに丸投げしていいのか?」というお話です。
最近の歯科矯正の世界では、「AIが自動で計算してくれるから安心です」「最新のデジタルだから確実です」といった謳い文句をよく耳にします。しかし、世界中でマウスピース矯正の指導を行ってきた私から言わせれば、答えは明確にノーです。
私は、「AIが自動で決めたステージングだけで、患者さんの歯が安心してきれいに並ぶとは1mmも思ったことがない」のです。
なぜ、そこまで言い切るのか。私が日々の治療で何を考え、どこにこだわって皆さんの治療計画を作っているのか、少し本音でお話しさせてください。
1. 私が「AIの自動計算」を1mmも信用しない、3つの現実(エラー)
AIは非常に優秀な道具ですが、決して万能ではありません。特に、生きている人間の身体を相手にする「歯科矯正」においては、AIのきれいな画面には絶対に写らない「リアルな現実(エラー)」がいくつも存在します。私がAIの計画をそのまま信じないのには、3つの大きな理由があります。
① 患者さんの「実際の生活習慣」をAIは知らない
マウスピース矯正がワイヤー矯正と大きく違うのは、「患者さんご自身の手で取り外しができる」という点です。 ワイヤー矯正であれば、装置がガチッと固定されているため、24時間常に強制的に力がかかり続けます。しかし、マウスピースはそうはいきません。
- 毎日しっかり24時間近くつけてくださる方
- お仕事や食事の都合で、20時間ほどになってしまう方
- ついうっかり忘れてしまい、16時間しかつけていない日がある方
患者さんのライフスタイルや装着時間によって、歯の動き方は全く変わってしまいます。AIは画面上で「完璧に24時間使われている前提」の理想論しか計算できません。日々変化する皆さんの現実の行動までは、AIには予測できないのです。
② 「歯の根っこ」と「硬い骨」の衝突を予測できない
歯は、ただ歯茎の上に浮かんでいるわけではありません。顎の骨の中にしっかりと根っこ(歯根)を張っています。そして顎の骨の周囲には、「皮質骨(ひしつこつ)」と呼ばれる非常に硬い骨の壁が存在します。 もし、歯の根っこがこの硬い皮質骨にぶつかってしまうと、歯はそれ以上スムーズに動かなくなってしまいます。AIの簡易的なシミュレーションでは、この「骨の内部で起きている微細な衝突や抵抗」を正確に計算し、自動で回避するような複雑な動きを作ることはできません。
③ 大手メーカーの「シミュレーションの質」の低下
現在、世界的に有名な大手マウスピース矯正メーカーなども、コロナ禍の前あたりからAI技術を大量に導入し、自動化を進めています。しかし、私たちプロの目から見ると、現在の自動シミュレーションは決して素晴らしいものとは言えません。 私がマウスピース矯正を始めた2006年当時のシミュレーションと比べて、現在のAIによるシミュレーションの方が優れているかというと、むしろ「あれ? ちょっと残念だな…」と感じてしまうデータが送られてくることが多いのが現状です。 提示されたマウスピースの枚数が異常に少なく、「本当にこれだけの枚数で綺麗に治るわけがないでしょう」と、現場の人間として疑問を抱かざるを得ない計画が平気で作られてしまうのです。
だからこそ、私は「デジタルという最新技術をフルに駆使しながらも、治療の核心部分は思いっきりアナログ(人間の知恵と経験)」でなければならないと考えています。
2. 尾島流・AIの正しい活かし方。データ処理はAIへ、命吹き込みは私が。
誤解のないように言っておきますが、私はAIの技術を完全に否定しているわけではありません。むしろ、AIの強みを誰よりも理解し、現場でフル活用しています。
私の治療では、AIと私(ドクター)の役割を以下のように明確に分担しています。
- 【AIにお願いすること(データの下準備)】 患者さんのお口の中を3Dスキャンしたデータ(STLデータ等)を取り込み、歯冠(歯の見えている部分)と歯根(骨の中の部分)のデータを自動でガチンと結合させ、1本ずつの歯をデータ上で綺麗に分離する。こういった「デジタルデータの機械的な処理」は、AIのおかげで非常にハイレベルかつスピーディーに行えるようになりました。
- 【私が絶対に譲らないこと(治療計画の策定)】 AIが綺麗に分けてくれた歯のデータを使い、そこから「どの歯を」「どの順番で」「どの方向に」「何ミリずつ」動かしていくかというプログラム(ステージング)を組み立てる作業です。ここは、私のこれまでの全キャリアと臨床経験を総動員して、ゼロから手作業で組み立てます。AIへの丸投げは絶対にしません。
データの下準備という「作業」にはAIのスピードを借りますが、そこから先、皆さんの歯を美しく健康に導く「治療の命吹き込み」のステップでは、私がすべてのコントロールを握っています。このハイレベルなプランニングこそが、私たちが提供する矯正治療のプライドです。
3. 「ラフ」から打つか、「フェアウェイ」から打つか。独自のインハウス技術
私が治療において最もこだわっているのが、「インハウス・アライナー(院内製造・管理マウスピース)」による超精密コントロールです。
多くのクリニックでは、歯の型取りデータを海外の工場へ送り、そこで作られたマウスピースが一括で送られてくる「外注型」を採用しています。しかしこれでは、先ほどお話しした「骨の硬さ」や「治療の途中で起きる微細なズレ」に対応しきれません。
私はインハウスのメリットを最大限に活かし、歯の動きを「ゴルフ」に例えてコントロールしています。
歯の根っこが硬い骨(皮質骨)に当たって動きにくくなっている状態は、ゴルフで言えばボールが深い草むら(ラフ)に入ってしまっている状態です。ラフから無理にボールを遠くへ飛ばそうとしても、上手くいきませんし、クラブにも大きな負担がかかりますよね。
一般的な外注型のソフトはそこまで計算できないため、ラフにある歯をそのまま力任せに引っ張ろうとします。これが、治療が計画通りに進まなかったり、歯に余計な痛みを引き起こしたりする原因になります。
そこで私は、以下のようなアプローチをとります。
- 最初の1〜2ヶ月で「障害物」をよける いきなり歯を綺麗に並べようとするのではなく、まずは骨に当たって「ラフ」に入っている歯(例えば3番目の犬歯など)を、骨の壁からじわっと剥がすようにして、内側の安全な場所へと移動させます。
- 「フェアウェイ」へ持ってきてから一気に並べる 歯が動きやすい安全な場所(フェアウェイ)にボールを持ってきてからであれば、比較的楽に、そして確実に歯を並べていくことができます。
このように、治療の初期段階で「歯がスムーズに動くための安全なルート」をドクター自らの手で緻密にデザインするテクニックは、現在のAI技術では絶対に真似できない、私の最大のこだわりです。
4. 昨日と同じ計画は作らない。日々アップデートされる「将棋のような職人脳」
マウスピース矯正の治療計画(ステージング)を立てる作業は、プロの棋士が何手先も読む「将棋」の世界に非常によく似ています。
歯を綺麗にするためのルート(手)は無数に存在しますが、その中から「最も合理的で、最も患者さんの身体に負担がなく、最も後戻りしにくい最短ルート」を導き出すには、ルールの応用力と圧倒的な経験値が必要です。
実は先日、当院のスタッフから「先生が前回立てたステージングの結果を、次の患者さんの計画にそのまま反映させることもあるのですか?」と聞かれました。
私の答えは、「ほとんどない」です。
私は、今日作るステージングを、過去と同じやり方で作ることはありません。1ヶ月前、3ヶ月前の自分と同じことはまずしない。半年前、1年前の自分の治療計画を見たときに、「今の自分が作る計画の方が絶対にうまい」と常に確信し、常に昨日の自分を超えられるクオリティを心がけています。
私は現在も、国内外のドクター向けにステージングに特化したセミナーやコースを開講し、常に新しい公式や術式を研究し続けています。私の頭の中にある知識や技術は、日々アップデートされているのです。
つまり、いま私が皆さんのために作る治療計画は、これまでのキャリアの中で培ってきた「今現在における最高・最先端の知恵」が凝縮された、世界に一つだけのオーダーメイド作品です。
結びにかえて:あなたの生涯の笑顔を、信頼できる「人間の手」に委ねてください
どれだけデジタル技術やAIが進化しても、治療を受け、実際に歯を動かしていくのは、機械ではなく生身の「人間」です。
AIが弾き出した画一的なシミュレーションをそのまま受け入れるだけの治療では、どうしても一人ひとりの生活習慣や骨の硬さといった「リアルな壁」にぶつかったときに、歯が動かなくなるというエラーを起こしてしまいます。
私のマウスピース矯正は、
- 最新のAI技術で、精密なデータを効率よく処理する
- 長年の臨床経験に基づいた職人技で、安全な歯の動かし方を設計する
- インハウス(院内)システムで、一人ひとりの骨の状態に合わせた微調整を行う
という、デジタルとアナログのベストな融合によって成り立っています。
「せっかく矯正をするなら、絶対に失敗したくない」 「自分の身体の特徴に合わせた、本当に安心できる治療を受けたい」
そう願う方は、ぜひ一度、私のクリニックに相談にいらしてください。AIの画面を超えた先にある、確かな経験と情熱に基づいた治療計画で、あなたが心から満足できる理想の笑顔を一緒に作っていきましょう。
それでは、また次回のブログでお会いしましょう。ごきげんよう。
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