「矯正は痛い」はもう常識ではありません
矯正を迷う理由、第1位は「痛み」
矯正治療を考えている方から、いちばんよく聞かれる不安が「痛みが心配」という声です。「歯並びは直したいけれど、痛くてご飯が食べられなくなるのでは…」と、一歩を踏み出せずにいる方は少なくありません。
結論からお伝えすると、今は痛みをかなり抑えられる矯正方法があります。 この記事では、動画で矯正歯科の先生が解説していた内容をもとに、なぜ矯正で痛みが出るのか、どうすれば痛みを減らせるのかを、わかりやすくまとめます。
そもそも、なぜ矯正は痛いのか
「歯を動かす」と聞くと、歯そのものが動いているイメージがあるかもしれません。しかし実際には、歯の根っこの周りにある骨の形を作り変えているというのが正しい理解です。歯そのものは変化せず、歯を支える骨のほうが変わっていきます。
その仕組みは次のとおりです。
- 歯に矯正の力がかかると、プロスタグランジンという、炎症のときに出る物質に似たものが集まってきます。
- それがきっかけとなり、骨を溶かす(吸収する)細胞が集まり、歯の進行方向にある骨が吸収されます。
- 歯が動いたあとの側では、骨を作る細胞が集まり、新しい骨が作られます。
この「壊して、作る」の繰り返しをリモデリングと呼びます。リモデリングの最中、体は炎症が起きているときに近い感覚を受け取ります。これが矯正の痛みの正体です。
つまり痛みは、歯がきちんと動いている過程で起こる自然な反応でもあります。だからこそ大切なのは、痛みをゼロにすることではなく、できるだけ小さくおさえながら、きちんと歯を動かすことです。
マウスピース矯正が「痛みが少ない」と言われる理由
マウスピース矯正(アライナー矯正)が痛みの少ない方法だと言われるのには、理由があります。
マウスピース矯正では、1枚のマウスピースで動かす歯の距離は約0.25mmです。この数字は、実は歯と骨のあいだにある「歯根膜(しこんまく)」というクッション状の組織の幅とほぼ同じです。
つまり、歯が自然に動ける隙間の範囲だけを、少しずつ動かしているわけです。無理に押し込むのではなく、体が受け入れやすい範囲でそっと動かすので、非常に理にかなった、体にやさしい矯正力だといえます。
先生ご自身の体験談
動画に出ていた先生は、ご自身も矯正治療を体験されています。ワイヤーを使った装置を、歯の表側にも裏側にも装着したそうです。
そのときの感想は、**「痛くて、ご飯が食べられなかった」**とのこと。専門家でさえそれほどつらかったのです。
一方で、マウスピース矯正に切り替えたときは違いました。仕組みを知っているので「動かす以上は痛いはずだ」と身構えていたのに、実際には「あれ、痛くないな」という感覚のまま治療が終わったそうです。聞き手の先生も同じ経験で、食事ができないほど痛いことはなかったと話していました。
ただし、新しいマウスピースに交換した直後は、少し**「きつい」と感じる**ことはあったそうです。マウスピース矯正は痛みが少ない治療ですが、「きつさ」を感じる場面はゼロではありません。
さらにやさしい「形状記憶アライナー」
その「きつさ」をさらに減らす方法として紹介されていたのが、形状記憶(シェイプメモリー)アライナーです。動画では、現時点で世界一矯正力がやさしい装置だと紹介されていました。
必要な力が約10分の1に
動画では、アメリカの大学の矯正医による論文が紹介されていました。同じ歯を0.3mm動かすのに必要な力を比べたものです。
- 従来型のアライナー:約15N(ニュートン)
- 形状記憶アライナー:約1.5N
同じ距離を動かすのに、必要な力が約10分の1で済むという内容です。動画内では「9分の1」と表現されていました。力が小さくても、同じ歯の移動ができるとされています。
患者さんの声
実際に、従来のマウスピース矯正で治療を始め、途中の仕切り直し(再評価)の段階で形状記憶アライナーに切り替えた患者さんがいるそうです。その方からは、「痛みや締めつけがほとんどなくて、これ、ちゃんと動いていますか?」と心配されるほどだったといいます。
また先生によると、形状記憶アライナーの患者さんから「きつい」「痛い」という訴えはほとんど聞かないとのことでした。
お子さんの矯正にも向いています
力がやさしいということは、体への負担が小さいということです。動画では、お子さんの矯正にもとても向いていると話されていました。
子どもの矯正では、「痛がって嫌にならないか」「治療を続けられるか」が親御さんにとって大きな心配事です。痛みや違和感が少ない装置なら、お子さん本人も受け入れやすく、治療を続けやすくなります。
動画の先生の医院は、このタイプのアライナーを世界でも有数の数の症例で扱っているとのことです。また、アライナー矯正そのものの経験は20年に及ぶそうです。
矯正中の痛みとうまくつき合うために
動画の内容に加えて、一般的に知られている痛みへの対処も、簡単に紹介します。
- 新しい装置に替えた直後が一番つらいことが多い。 その時期は、やわらかい食事を選ぶと楽に過ごせます。
- 痛みが強いとき、長く続くときは我慢せず、担当の先生に相談する。 装置の調整や、痛み止めの使い方を教えてもらえます。
- 自己判断で装置の装着をやめない。 休むと歯の動きが遅れ、かえって再開時に痛みやきつさが出ることがあります。
こんな方は、一度矯正相談へ
次のどれかに当てはまる方は、痛みの少ない矯正という選択肢を知ることで、気持ちが変わるかもしれません。
- 歯並びを整えたいけれど、痛みが怖くて踏み出せない
- 過去にワイヤー矯正で痛い思いをして、矯正にいいイメージがない
- お子さんの矯正を考えているが、嫌がらないか心配
- 今の治療でつらさを感じていて、ほかの方法を知りたい
なお、どの装置が合うかは、歯並びの状態や治療の目的によって変わります。形状記憶アライナーも含め、自分に使えるかどうかは、実際に診察を受けて確かめるのが確実です。
まとめ:「我慢する矯正」から「負担を抑える矯正」へ
矯正の痛みは、骨が作り変わる過程で起きる自然な反応です。しかし、マウスピース矯正は1枚あたりの移動量が歯根膜の幅ほどと小さく、痛みが少ない方法です。さらに形状記憶アライナーは、必要な力が従来の約10分の1にまで抑えられるとされています。
「矯正は痛くて当たり前」「ご飯が食べられなくなるのは覚悟」という時代は、変わりつつあります。痛みが理由で諦めていた方も、まずは矯正相談で、ご自身に合った、負担の少ない方法を聞いてみてはいかがでしょうか。
それでは、また次回のブログでお会いしましょう。ごきげんよう。
こちらの内容は動画でもご覧いただけます


