臼歯の咬耗が大きい場合アライナー矯正治療でどう仕上げる?

歯のすり減りがある方の矯正治療について

治療前に知っておいていただきたい大切なお話です。安全で長持ちする矯正治療のために、ぜひご一読ください。

まず確認:歯はすり減っていませんか?

歯が互いに強く当たり続けることで、歯の表面(エナメル質)が少しずつ削れていく状態を「咬耗(こうもう)」と呼びます。矯正治療を始める前に、この咬耗がどの程度あるかを確認することが非常に重要です。

エナメル質とは?

歯の一番外側を覆う、体の中で最も硬い組織です。歯を外からの刺激や虚歯菌から守るバリアの役割を果たしています。一度削れてしまうと、自然には再生されません。

咬耗が多い状態とは?
エナメル質がほとんどなくなり、その内側にある柔らかい「象牙質」が表面に露出している状態です。象牙質はエナメル質に比べて格段に柔らかく、そのまま強い力で噛み合わせると急速に削れていきます。

 

そのまま矯正すると何が起きるのか

咬耗が進んだ状態でそのまま矯正治療を行い、歯を噛み合わせてしまうと、以下のようなリスクが生じます。

1 象牙質がどんどん削れる

保護するエナメル質がない状態で噛み合うため、残った歯の組織が急速に失われます。

2 歯の神経が死んでしまう(失活)

削れが進むと歯の神経に到達し、歯が「死んだ状態」になってしまいます。これを失活といいます。

3 最終的に歯を失うことになる

失活した歯は脆くなり、最終的には抜歯が必要になるケースが少なくありません。

つまり:咬耗が多い歯をそのまま噛み合わせる矯正治療は、「歯を救う治療」ではなく「歯を失う方向に進む治療」になってしまう可能性があります。

先生が提案する安全な治療の流れ

咬耗が多い方には、矯正治療と並行して歯の修復(補修)を行うことをお勧めしています。具体的には次の2つのアプローチを組み合わせます。

クリアランスを作る・バイトアップ

アライナー(マウスピース)を装着することで噛み合わせをわずかに持ち上げ、傷んだ歯同士が直接強く当たらないようにします。この「すき間」を利用して、削れた歯の修復治療を安全に進めます。

並行して修復治療

削れてしまった部分をかぶせ物やコンポジットレジン(白いプラスチックの詰め物)などで補修します。歯を「守りながら」矯正を進めることで、治療後の歯が長持ちします。

目標:矯正が終わったときに「きれいに並んでいて、かつ歯が健康な状態」を実現することです。見た目だけでなく、歯の寿命を守ることが大切です。

 

わかりやすいたとえ話

家の建築で考えると…

「リビングを広くしたいから柱を取り除いてください」というお客様のご希望を、建築士がそのまま通したとしたら、どうなるでしょうか?家は崩れてしまいます。

専門家の仕事は、ご希望を叶えながらも「家が安全に立っていられる構造」を守ることです。歯科治療も同じで、患者様のご希望を最大限に尊重しながらも、長期的に歯が健康でいられる方法をご提案するのが私たちの役割です。

 

「修復はしたくない」と思っている方へ

「できるだけシンプルに、余計な治療はしたくない」というお気持ちはよく理解できます。ただ、咬耗が進んだ状態のまま矯正だけを行った場合に起こりうるリスクを、ぜひ一緒に確認させてください。

リスクを知った上での選択が大切です

修復を行わないまま治療を進めることで生じるリスク(歯の喪失、神経の死滅など)を十分にご理解いただいた上で、治療方針を一緒に決めることが重要です。担当医と十分に話し合ってください。

場合によっては治療をお断りすることも:
修復なしで治療を進めることが患者様の歯に明らかな害をもたらすと判断される場合、安全上の理由からその方法での治療をお引き受けできないこともあります。これは患者様の歯と健康を守るための判断です。

 

まとめ

咬耗(歯のすり減り)は放置すると歯を失う原因になります

エナメル質がなくなった歯は、強い噛み合わせに耐えられません。

矯正治療と修復治療を組み合わせることが安全な方法です

アライナーで噛み合わせを持ち上げながら、削れた部分を補修します。

治療の目的は「きれいな歯並び」+「健康な歯」の両立です

長く自分の歯でお食事や生活を楽しんでいただくために、一緒に最善の方法を考えましょう。

 

ご不明な点やご不安なことがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。

患者様の歯を守ることが、私たちの一番の目標です。

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